令和のふとん屋の姿とは!?
45年前(私24才)の出来事をお話します。
その当時、私は「ふとん仕立て職人」でした。
ある時、お客さまからの要望です・・・
「掛ふとんが重いので、軽くしてほしい!」 とのことです。
わかりました。方法は2通りありますがどちらが良いですか?
①木綿の中にポリエステル綿を挟み込むサンドイッチ型
②木綿とポリエステル綿を機械で混綿するブレンド型
お客さまは良く解らないので「任せる!」との一言でした。
私自身も、①と②のどちらが優位なのかは解らなかったので、とりあえず①にしました。
結局、わたしの取った行動は、①のサンドイッチ方式です。
理由は、②は製綿機械で綿を作るので、とても手間が掛るからです。
・・ 実は、父親は両方とも反対でした。
「軽くするなら、綿を薄くすれば良い、ただし保温性が下がるので、その点はお客さまに承諾してもらう!」 という意見でした。
昔から長い間、掛ふとんは1.5貫目(5.6kg) 敷ふとんは、2貫目(7.5kg)が一般的な入れ目だったのです。(1貫目=3.75kg)
でも昭和も後半には、とても重いという声が多くでたので、当店では、1.2貫目(4.5kg)にしていました。
お客さまは、1.2貫目でも重いので、「もっと軽くして・・」の要望なのです。
そうしてお買い上げから3年経ったころに、再度ご来店くださいました。
きっと、「軽くて使いやすくなったよ、ありがとう!」と言われる、と勝手に思い込んでいました。
ところが・・・
「軽くはなったけど、3年でペチャンコになり、日に干しても、ふくらまないんだよ! それに寒い!」 というクレームでした。
予想外の結果でした。
父親に聞きました。
(享年88才にて他界)
「父さんは、このことが解っていたの?」
「いいや全く分からなかったが、ポリエステルという化学繊維の特性がまだ良く解っていない段階で、作ることに躊躇したんだ!」
わたしは、父親の長年の勘という凄さを知った瞬間でした。
私も寝具に携わって今年で50年になり、ようやく分かったことがあります。
ポリエステルという化学繊維と、木綿・ウール・羽毛などの天然繊維を混ぜて使うことはタブーであるということです。(うまく混ざらないのです)
化学繊維は、石油という天然資源を使ってはいますが、そこに化学分解をした繊維は、もう天然繊維とはいえません!
天然繊維は、あくまで自然な状態で使ってこそ機能を発揮します。
令和の時代は、サステナブルに意識が移りました。
「自然な素材を自然な形で生かし切る!」 という方法を維持して、環境問題に意識を向け対処する時代です。
こんな時代の「ふとんの有り方」をもう一度、父親の意見を聞いてみたいものです!